カンボジア料理 神楽坂 バイヨン

カンボジア料理とはなにか。アメリカ食文化研究者から見たカンボジアの食文化

 その国の食文化を語るというのは難しいことです。ましてや自分の国でなければさらに難しいと思います。しかし、幸いなことに世界中を巡って研究する専門家がいます。
    
 この専門家の研究から、カンボジアの食文化はインド、中国、フランスなどからの直接的な影響と仏教による精神的な影響が大きいと言えそうです。

●アメリカ人食文化研究者、ヘレン・C・ブリティンさん

 今回は研究者ヘレン・C・ブリティンさんが書いた『国別 世界食文化ハンドブック』(柊風舎)からカンボジアの食文化をご紹介します。
   
 著者はテキサス工科大学栄養学名誉教授で、同大学で食文化の講座を創設し数千人の学生を指導するという経歴の方です。世界中を巡って食文化の教育、調査研究を進めています。食文化については100以上の論文や著書があり、テキサス栄養士会会長・国際家政学会会長も務めています。
   
 この本では、食文化への影響、食材、典型的な料理などさまざま項目をもとに世界195か国の食文化を紹介しています。
   
 ということで、この本からカンボジアの食文化について、記事の下に引用させていただきました。

●カンボジアの食文化は「小乗仏教による霊的完成…」

 カンボジアについては2ページにわたって書かれています。「食文化への影響」の項目を見るとインド、中国のほかフランスパン、コーヒーなどフランスの影響について書かれています。
   
 また、小乗仏教と食の関係について哲学的な考察もあります。「小乗仏教による霊的完成を目指す…」などちょっと難しく書かれていますが研究者らしい分析だと思います。
  
 「国民食」のところでは「アモック(魚をココナッツミルクで調理し、葉でくるんだ料理)」と「バン・チョク(ビーフンと魚のスープ)※当店ではノンバンチョック」の二つが説明されています。なるほどと納得できる内容ですね。
  
 さらに「香辛料」についても食材まで細かく書かれていて、詳しく調査されていることがわかります。そのほか穀類、肉、野菜から甘味類、食事の時間帯まで書かれています。カンボジアの食文化を知る上では貴重な研究資料だと思います。

●日本の食文化は「茶」によって生まれたか

 ついでにですが、では日本についてはどのように書かれているのかと興味がわいてしまいますね。書かれている内容をカンボジアの食文化の後ろに一部ですが引用させていただきます。
   
 「食文化への影響」では「茶」について詳しく書かれています。この項目の4割ほどが茶の影響について書かれています。中国からの伝来、茶道のはじまり、禅宗との関わりなど日本人でさえ「そういうことなのか」と思うようなことまで書かれています。
   
 食文化研究者としては、その国の食文化は歴史や宗教観などによるものの影響が大きいと言いたいのですね。そう考えると、毎日「腹減った。うま~い。お腹いっぱい」というばかりの自分の食生活を少し反省です。
   
以下、この本からの引用です。

<カンボジア王国の食文化>

食文化への影響20世紀の前半、王宮と貴族の館の料理は見た目も鮮やかなものだったが、後半には流血の惨事と騒乱とに振り回される日々だった。カンボジア料理はインド北部、マレーシア、中国に影響され、さらにインゲンマメ、ジヤガイモ、フランスパン、ペストリー、コーヒーなどフランスの影響も見られる。広く浸透している小乗仏教が食にも影饗を与えている。小乗仏教は霊的完成を目指す一人ひとりの努力を重視しており、寺院と僧への布施は生まれ変わりを通しての成長には欠くことができず、托鉢に応えることは重要である。カンボジアの地形と気候は稲作と、トウモロコシ、キヤッサバ、野菜、果物、カシューナッツの栽培に適しており、家畜も飼育しやすい。タイランド湾と多くの湖、河川では魚が獲れる。  
パンと穀類米(短粒米と長粒米)、トウモロコシ、小麦:米科理、ビーフン、麵。フランスパン、ペストリー。米が主食で、ビーフンも多くの料理に使われる。白いトウモロコシが栽培され、食べられている。  
肉と魚鶏肉、牛肉、豚肉、水牛、ワニ、魚(ほとんど淡水魚):魚醤、発酵した魚の食品。東南アジア全域で魚醤(トゥク・トレイ)が使われ・食事にたんぱく質を加えることにもなっている。カンボジアには魚から作る発酵食品はプラホック(魚が入ったぺースト)とファーク(塩水につけた魚と米)の2種あり、どちらも洗って下ごしらえした魚で、何週間もかけて作られる。
乳製品コンデンスミルク(コーヒーに使用)、生クリーム(ペストリーに使用)
油脂ココナッツクリーム、ラード、べーコン、バター、マーガリン、ピーナッツ油、植物油
豆類大豆と大豆製品(豆乳、大豆を発酵させたもの、もしくはテンペ)、落花生、ヒヨコマメ、レンズマメ、緑豆
野菜キャッサバ、タピオカ(キャッサバもしくはタロイモから作られる製品)、キャベツ、ケール、ニンジン、サヤインゲン、キュウリ、ラディッシュ、クズイモ、プランテーン、ニガウリ、ジャガイモ、トマト、カボチャ、ナス、クワイ
果物ココナッツ、バナナ、ライム、タマリンド、ドリアン、マンゴー、パパイヤ、オレンジ、レモン、メロン
種実類カシューナッツ、アーモンド、ハスの実、カボチャの種、ゴマ
香辛料魚醤、発酵した魚のべーストとソース、ライム汁、タマリンド、レモングラス、ココナッツミルク、トウガラシ、ニンニク、ワケギ、ショウガ、ターメリック、生のコリアンダー、ミント。香辛料は繊細で香りがある。たとえば、クルーンはガランガル、ニンニク、カフィアッライムの葉、レモングラス、ワケギ、ターメリックなどのハープやスバイスを刻んで作った調味料である。レモングラスがよく使われ、酸味も好まれる。
料理米は蒸したり、ゆでたり、炒めたりする。クイティウはビーフンのスープヌードルで、中国スープとも呼ばれる。淡水魚を焼いたりフライにしたりしたメイン料理。肉や野菜を使った焼きそば。野菜炒め。サラダ。野菜と末成熟の果実を細切りにして、牛肉、家禽類の肉、魚を辛いドレッシングで混ぜてのせたもの。米、野菜を肉とともにバナナの葉、または食べられる葉で包んで蒸す。クロラーン(短粒米、ココナッツクリーム、刻んだココナッツ、調味料を竹の筒に入れ、1時間火で焼いて竹を外す)。オンソーム・チュルーク(米・緑豆、豚肉もしくは豚脂をバナナの葉で包み蒸す)はさまざまなバリエーションがある祝祭食である。
国民食アモック(魚をココナッツミルクで調理し、葉でくるんだ料理)。バン・チョク(ビーフンと魚のスープ)
甘味類サトウキビ、砂糖、果物、ココナッツのフライ、ココナッツをまぶしたバナナのフライ、甘い黒米    
飲物茶(バラやジャスミンなどの花とブレンドすることが多い)、豆乳、熱いスープ、果物や豆を使った飲み物、コーヒー、ビール、特別な機会には米を使った醸造酒や蒸留酒。
食事午前1I時頃とタ方、1日2回が一般的。標準的な食事は米とスープ(サムロ一)、ある時は以下のどれか:チャー(肉、野菜、ビーフンなどの炒め料理)、アーン(肉もしくは魚のグリル料理)、チオン(肉、魚のフライ料理)。すべての料理は同時に出され、食べる人はご飯を少しとってその上に料理をのせる。スプーンか箸、もしくは手で食べる。
間食果物、飲物、タペ(短粒米を発酵させたもので、甘く少しアルコールを含む)

<日本の食文化(一部)>

食文化への影響日本は山がちな島々で構成されているため、農業に利用できる土地は少ない。食料の多くは輸入されている。沿岸の海域では魚介類が獲れる。島国であったため、日本では、魚、海藻、野菜、果物などの固有の食材に頼った料理が発達した。6世紀から9世紀のあいだに日本にもたらされた中国の影響は、仏教、大豆、茶である。中国から800 年頃に初めて輸入された茶は、15 世紀に日本の宮廷が仏教の茶礼を採択したこともあり、広く一般的な飲み物となった。茶道は13世紀にはじまり、禅僧が修行のあいだに儀式として、また眠気覚ましとして茶を飲んだ。この儀式は、禅寺では今でも重要視され、社交活動として今も広く行なわれている。今日、茶道は自然との調和と自分自身との調和を反映している。本格的な茶の儀式(茶事)には、色彩と味のバランスをとり、季節を反映させた小さなコースの食事(茶懐石)が含まれる。それよりシンプルな茶会では、茶の前に菓子が供される。茶は、緑茶の粉末に湯を加え、泡立てて緑色の飲み物を作る。16世紀半ば、ポルトガル人は日本と貿易を開始し、天ぷら(水溶き小麦粉を食材につけた揚げ物)をもたらした。1850年代、日本は固く閉ざされた鎖国時代を終え、工業化とともに西洋の食生活を取り入れはじめた。仏教による菜食主義は徐々に放棄され、牛肉、豚肉、鶏肉が料理に現われはじめる。魚介類と米(ご飯)は、ほとんどの食事で食べられる主要な食べ物である。大豆製品、海藻、野菜、果物が重要な食品である。日本科埋は慎重な調理と巧みなプレゼンテーションが有名で、それぞれの食品の特性をよく理解している。

出典:ヘレン・C・ブリティン著/小川昭子・海輪由香子・八坂ありさ訳『国別 世界食文化ハンドブック』柊風舎 2019年

国別 世界食文化ハンドブック

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